修士課程ナノテクノロジープログラム(MNT)を担当している白井光雲先生から、先生の研究分野である第一原理計算、日越大学での活動、また先生から見る日越大学の“強み”についてお話を伺いました。
–先生の研究分野について教えてください。
広く言えば、物質の性質の理論研究です。理論もいろいろありますが、私の行っているものは、第一原理計算と呼ばれるものです。固体物質は非常に多くの原子から成り立っており、その性質を一つ一つの原子の量子力学的性質から計算するということはとてつもなく大変なことですが、最近はそういうことができるようになりました。そして得られた結果も大変精度が良いことが分かって来て、今では逆に計算の方から新たな物質を予測するということが物理の新しいチャレンジとなっています。私の場合は、新物質というだけでなく、どういう条件でそういう物質が作成できるかということを予測、研究しています。
–日越大学では専門家としてどのような活動をされていますか。
大学院の講義を受け持っており、先に述べました第一原理計算というものを使った材料研究を進めています。第一原理計算というのは、高性能計算機を使うものですが、幸い日越大学にはその設備があり、また第一原理計算プログラムも導入されています。私にはプログラムを開発してきた経験があるため、単に使うという以上のノウハウ、結果の解釈力があります。その面からの研究・教育を進めています。また日本において第一原理計算のコミュニティがあるので、連携して計算機材料設計のワークショップを開催しベトナムのこの分野の発展に寄与していきたいと思っています。もう一つ、関係した新しいプログラム(メカトロニクスと日本型ものづくりプログラム)の開設にも関わっています。
–先生から見る、日越大学の“強み”は何だと思いますか。
これは私の方が感心しているのですが、MNTの面接試験でベトナム人学生に志望動機を聞くと、環境、健康など社会問題を解決するためと答える人がいることです。これは大切なことで、これからの日越大学の方向性を大いに暗示していると思います。私は物質の研究者で、環境問題には直接タッチしていませんが、個人的な願望としては物質開発を通じての環境問題への貢献があります。よく考えてみると、日越大学にはその潜在能力があります。日越大学には気候変動・開発プログラムがあります。日越大学は小規模ですが、それは小回りが利くともいえ、環境のテーマでまとまるにはメリットにもなります。そういう社会的な期待に応えられるような大学にしていくべきではないかと感じています。